君の忘れた水槽 あとがきです。
演劇集団宇宙水槽はじまり公演
「君の忘れた水槽」
無事終了しました。みやたです。
たくさんのご来場誠にありがとうございました。
1週間経ちまして、色々と整理がついてきたところです。
もう1週間? まるで夢のような時間だったなと思い返します。
さてさて、終わったところですが、あとがきとして裏話や、隠していた台本の話をしていきたいと思います。
めっちゃネタバレですので、読む時は気をつけてくださいね~。
この度DVDの作成もする予定ですので。
それでは、いってみましょう。あとがきです。
・「君の忘れた水槽」
初回公演は2011年10月。
当時鹿児島大学演劇部テアトル火山団を卒部したメンバーが、もう一回お芝居しようと集まって、テアトル火山団番外公演と銘打って行ったのがこの公演でした。
何度も言っていますが、これが宇宙水槽の始まりだったんですね。
舞台はアトリエと呼ばれる大学の美術科の創作部屋。
登場人物も、大学生のはるか先輩、桜井くん(前回は名前が桜井でした)、エンゼル。は変わりませんが、さらに、美術部の教授、同期の鮎川。と5人登場していました。
話している内容も大学生らしい、くだらない会話が多かったと記憶しています。
今回は登場人物に合わせて年齢を上げて大幅にリメイクされています。
・「世界」
10年前の台本、さすがに言葉の選び方が古いって思いながらもそのまま行きました。
セカイ系に影響されていますよね。
いのるくんにとって世界とは、はるかさんのいるアトリエがとても大切なものだった。
ぼく、にとって、エンゼルがいるその部屋が世界の全てだった。
人の主観によって、世界とは大きく変わるもので。
その世界が壊れてしまう時に、何をするのか。それが物語の主軸になっています。
別れる時に、何も言えない、広すぎる世界と。
ある日突然壊れてしまう、だけど言いたいことが言えた、狭い世界。
どちらが幸せなのかはよくわかりません。
世界が壊れるという状態を、枠が倒れることによって表現しています。
10年前は技術的にできなかったのですが。今回は完全にバラバラに倒すことに成功しました。
これは囲み舞台だからできる技ですね。
見上げるような装置が壊れて、何も無くなった舞台はとても美しいものがあります。
「囲み舞台」
今回は初めて囲み舞台を作ってみました。
水槽っていうイメージがあったので、かなり初期から囲み舞台の構想はあったのですが、技術的に難しいということで見送っていました。
実際に初めてやると、まあ大変。
声が届かない、今でやってきた技術が通用しない。
色々と模索しながらこのお芝居に挑むことができました。
ちなみにアイディアスケッチには、三面舞台とか、逆囲み舞台とか、夜景が見えるところでやるとか。いろんなアイディアがのこっています。
・「水槽の中の魚は幸せなのか」
このお芝居の隠れテーマです。
自分は物語を作る時に、テーマを設定することが多いのですが。
それは表に出すことはあまりありません。なぜなら、このテーマについて考えてほしいわけではなく、そのテーマについて熟考して作った作品を見てもらいたいからなんですね。
もとは、水族館か動物園かどちらかに書かれていたお客さんの質問コーナーにあった、子供が書いたものだったと思います。(何かのエッセイに書かれていたんですが。)
それを見た時に、小さく突然壊れてしまうようなそんな世界で、何不自由なく暮らしている魚は幸せなのか? というテーマが心に残っていたものです。
テーマに対して作者の主張というものも存在します。
今回のこのテーマに対する自分の答えは
「1匹だと幸せではないかもしれない(幸せに気づかないかもしれない)、だけど、もう1匹いたら、その小さな空間は幸せで満ち溢れることになるだろう」
という主張になります。
その二つが色々と組み合わさって作品に昇華されたわけですね。
・「童話と芝居の嘘」
自分は高校の時は演劇部ではなく文芸部に所属していました。
実はその時、童話を書いていることが多かったのです。
今回の作品も初期作品だからか、童話のような雰囲気がのこっています。
ただのファンタジーではなくて、その物語は、現実離れした美しすぎる、綺麗すぎるお話になっています。少し斜に構えると、そんなセリフはリアルには出てこないだろうとか。深く考えるとおかしなことがたくさんあります。
だけどそれは芝居の嘘で押し通しているお芝居になります。
重要なところはそこじゃない、大切なところを描くために細かいところは嘘で押し通しています。
油絵はそんなに早く乾かないだろう……とか。
宇宙じゃ声は届かないだろう……とか。
大理石って実際どのくらいの値段でかえるのだろう……とか。
書いている自分も気づいています。でもいいんです。
たとえば童話で「なんで動物が喋ってるんだ!」って突っ込む人はいないと思います。
そう、それと一緒、これはそういう世界のお芝居なんですね。
・「エンゼルとは」
さて、ここは完全に設定の話ですね。
イマジナリーフレンドのように出てくるエンゼル。
いのるくんの心の中にいる子の存在。彼女は一体何者だったのか……。
自分の設定では決まっているのですが、、色々考えた結果作中では端折っています。
気づく人は気づくけばいい。ぐらいの鮮明度で物語を仕上げました。
エンゼルは、エンゼルフィッシュのこと。
断片的に語られていた、過去に水槽で起きた出来事は全部本当の話で。
1匹のエンゼルフィッシュを昔、彫刻家が飼っていた。
その彫刻家の恋人が、1匹だとかわいそうだからと、もう1匹エンゼルフェッシュを連れてきた。
その水槽の中は幸せ満ち溢れていた。
だけど、彫刻家は恋人と別れ、後に残されたのは水槽と2匹の魚だけ。
ある日、アトリエに住み着く金色の瞳をした黒猫が、その水槽を倒してしまう。
壊れた水槽を、彫刻家は捨てることができなかった。
ただそれだけの話。
それだけの話を、隠しながら物語にしていたのですね。
世界と壊す黒くて大きな化け物とは、あの黒猫のことだったんですね。
ちなみに黒猫の声は、CV竹葉靖典(劇団鳴かず飛ばず)でした。
いのるくんの前世の記憶が、心の中にエンゼルを作り出していたのです。はるかさんも同じです。ただしこちらは、あまり前世の記憶のようなものは残っていません。その時の感情のかけらだけが残っているという状態。それを形にすると、天使の彫刻になっていった。
そういう前世のつながりを意識してみるとまたセリフの意味が変わって見えるかもしれません。
・「衣装について」
このお芝居はファンタジーな世界と現実の世界を行ったり来たりするので、特に主人公の衣装に悩みました。衣装担当話、出来上がったのがあの主人公の服。
ただのシャツの上にチュールでもう一枚シャツを重ねています。
照明が通る時に光るため、光によっては不思議な服になっていますね。
ちなみにこの服は手作り。 全く同じ形のシャツを用意するために、下のシャツも手作りです。衣装班の底力が見え隠れ増します。
エンゼルの服は、天文館の中にある星の雑貨屋「まよなかのアトリエ」にて購入しました。
キラキラ光る星や月の形したスパンコールが、不思議な存在感を演出してくれます。
それに合わせて髪やメイクもキラキラ成分が盛られていますね。
・「音響について」
この度は音響は本当に良かった。
Apple Musicでも聞くことができる、Izumi Takaakiさんの曲を使用しています。
しかも今回は直接楽曲を依頼して、なんと4曲もの新曲を作成してもらいました。
作成方法も、この君の忘れた水槽のストーリを語り、台本を送り。イメージで作ってもらうという贅沢な使用。
さらには細かい時間調整までしてもらい、完全に、このお芝居のための楽曲が使われています。
メインテーマ「宇宙水槽」
2幕宇宙に行く時「cosmorium」
喧嘩する曲「君の忘れた水槽ver.悲しい」
ラストシーン「君の忘れた水槽」
曲名も合わせて作ってもらっています。
オーダーメイドで作っただけあって、このお芝居の雰囲気を決定づけていたと思います。
Izumiさん、本当にありがとうございました。
メインテーマはこちらで聞くことができます!
https://www.youtube.com/watch?v=AWtF3c79n2U&t=78s
・「フライヤーイラストについて」
海嶌あありすけさんのイラストによるフライヤーです。
これもまた、前々から気になっていた、鹿児島で活躍するイラストレーターさんに依頼して、このお芝居のイラストを描いてもらいました。美しい幾何学的な模様がこのお芝居の雰囲気にぴったりです!
こちらもの物語のあらすじを聞いてもらって、そのイメージをで描いてもらいました。
正方形の水槽のイメージ、お芝居のイメージ、水草を連想する模様、重要なシーンである月も空に浮かんでいます。右下には金色の猫の目、左上には天使の羽のモチーフも入れていますね。
素敵なイラストをありがとうございました!
・「十年間のお芝居」
君の忘れた水槽は、はじまり公演にふさわしい、宇宙水槽の原点が積み込まれているお話でした。
よみかえしてみて、この十年間やってきたお芝居の核になるような、セリフが見え隠れています。
・はるか 自分で決めたことだから自分で守る
→ ハイスピードジャンケンバトル公演「劇闘!虹ヶ原学園!」
・エンゼル 私知らない。その言葉の意味を
→ 現代神話公演「BABEL」
・えんぜる 忘れないでね……
→ 肝試公演「ひとつ目の街」
・忘れちゃいけない大切な思い出なんだ
→ 裏表公演「犯罪王クロイツ表」「メモリー」
・だから僕は気づかないふりをした
→ 裏表公演「犯罪王クロイツ裏」
・僕は君に言いたいことがあるんだ
→ ハイスピードプリールフールコメディ「四月馬鹿の宴」
10年前から同じセリフがあるんだと再発見して感動したものです。
宇宙水槽は10周年を迎えました。
だけど、10周年記念公演がまだ打てていません。
次なる公演は大きな舞台をした、それに向けて、活動をしていこうと思います。
ちょっとしたら、次の大きな公演に向けて、劇団員募集とかやってみようかなぁ。
宇宙水槽の活動を是非是非チェックしてみてください。
一番情報更新が多いのはTwitterかな?
とりあえず、次の舞台は鹿児島演劇見本市。
気持ちをそちらに向けて進んでいきます!
宇宙水槽は今年も色々と動いていきます。また舞台でお会いしましょう!